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穴の物語【あなたのためのあなたを穴の虜にする穴のオリジナルストーリー!】

 

本日のBGMです。

 

穴の物語

理由はわからないが、夜中に目覚めた。

真っ暗だ。しかも、何の音もしない。無の世界。

まるで視力を失ったかのように真っ暗なんだ。

よーく見ると、正面にちいさな光が灯りはじめている。

周りも見渡したが、あの正面のちいさな光以外は見えない

ここはどこだ。自分の部屋ではないというのか?

怖くなった。

もしかしたら、自分は死んだのかもしれない。

足を触ってみた。あった。すべすべだった。

目を瞑ってみた。

目を瞑っても1点の光が見える。

 

そういえば、昨日、砂場で穴を掘っていたのを思い出した。

結構、深く掘れたんだ。

きっと1メートルは掘ったと思う。

その穴に手を突っ込んだんだ。

すると中から手が出てきて、自分を引っ張った。

なかなか離さない。子どもたちは自分が演技でもしているかのように笑っている。

でも、実際は穴の中で知らない手に引っ張られているのだ。

あまりに真剣に戦っているお父さん見た息子が心配そうに

大丈夫? 「パパーッ」と大声を上げ始めた。

すると手は解かれ、穴へ引き込まれずに済んだんだ。

そんなことが昼間にあったことを思い出した。

 

真っ暗で静寂の中、突然、音が響き始めた。人の声だ。

とっても低い声で、

「お前はどうして私をつくった?」

真っ暗中から聞こえてきた。

怖すぎるだろと思いながらも、意味さえ分からないので、

丁寧に答えることにした。

「どなたですか?」

「なぜだ?なぜ私を作った?」

「あなたは何者ですか?」

「○○公園の砂場の穴だ。」

「穴?」

「お前が作った穴だ!」

「ごめんなさい、穴がしゃべっているんですか?」

「何が悪い?」

「いや、ごめんなさい。穴って生き物なんでしたっけ?」

「お前は俺を舐めているのか!」

「え?穴を舐める?」

「なに嬉しそうに言ってやがるんだ!」

「いやいや、大丈夫です。」

「なにが大丈夫なんだ?」

「穴を舐める件です。」

「やっぱりお前は俺を舐めているな!」

「めっそうもございません。」

「お前が俺を作って、俺はそのまま成仏できていない。どうにかしろ!」

「あ、穴のあなたを成仏させるのですか?」

「せやで~」

「と、突然、関西弁になった!」

「せやから、さっさとわいを成仏させなはれや!」

「はい、どうすればよいでしょうか?」

「穴の成仏の仕方も分からんのか?最近の穴掘りときたら、これやから困るんや!」

「ごめんなさい、未熟な穴掘り野郎で。」

「せや、ホンマに世話のかかる穴掘り野郎め! まずはググれや!」

「そうですね。ググります。」

「そうだよ、人に聞く前にググるのが常識やろ。」

「はい、申し訳ございません。調べるのでちょっとお待ちください。」

 

「んで、わいは成仏できるんやろな?」

「はい、おそらく」

「なんや、その自身のない返事は?」

「ごめんなさい。」

「じゃあ、やってもらおうか?」

庭に穴を掘った。

そして、成仏できない穴をその穴の奥の方まで丁寧に丹精込めて壊れないように入れた。

ここから勝負である。

その穴をいれた穴を埋め戻す必要があるのだ。そうなのだ。

庭に掘った、穴をしまった穴を必死にシャベルで埋めたんだ。

そして、ふと気が付くと、真っ暗な世界の1点のひかりが大きくなり始めた。

まぶしい。舘ひろしぐらいまぶしい

そして、自分は意識を失った。

 

朝が自分を目覚めさせた。

この夜の記憶ははっきりと覚えている。

そして、今ではわかるのだ。

あの真っ暗な中の1点の灯は、穴から見た私だったのではないかと。

穴よ、ごめん。そして、ありがとう。

(おわり)


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